賃貸と持ち家

賃貸と持ち家、どちらが得か

転勤族にかぎらなくても、賃貸か持ち家かどちらがいいのか悩む人は本当に多いと思います。結論から言うと、日本の場合、生涯賃貸暮らしのほうが経済的には余裕を持って暮らせると思います。

なぜなら、日本の土地は高い上に、住宅はとても高額なのに寿命が短く、木造住宅なら22年でその市場価値はゼロになるからです。とはいえ、固定資産税や都市計画税が免除されるわけではなく、持ち家である限りしっかり支払って行かなくてはなりません。

住宅ローンも30~35年かけて家賃以上の支払いを続けていかなくてはならないことがほとんどです。さらに、しっかり長持ちする家にするには10~15年単位でメンテナンスが必要です。そのための費用は、最低でも月1万円積み立てて備えておく必要があると言われています。

認定長期優良住宅の場合、35年間でかかるメンテナンス費用は1,000万円近いという情報もあります。これでは、ローンを完済しても支払いがずっと続きます。お金にとても余裕があるわけでなければ、夫婦2人だけなら、一生賃貸暮らしでいいと私は思っています。

ただし、転勤族にはむしろ「家を買わなくてはならない理由」が発生することが多いのです。

転勤族が家を買う理由

企業にもよると思いますが、転居を伴う転勤がある場合、基本的に同居家族はついていくことが前提となっていることが多いです。

各企業には単身赴任規程という社則があることがほとんどで、その認可要件を満たす場合にだけ「単身赴任」という選択ができることがほとんどなのではないでしょうか。

たとえば以下のようなものが、よくある主な要件になります。

  • 高校受験期・または高校在学中の扶養家族がいる
  • 70歳以上の高齢直径尊属扶養家族と同居している
  • 自費購入した持ち家がある

これは私の夫の会社の認可要件ですが、企業によっては子供が中学生以上などの場合もあるでしょう。

これらの要件を満たせない場合は、家族帯同で転勤するのが条件になっている会社が多いと思います。

つまり、わが家の場合、単身赴任手当をもらうためには持ち家を買うか、子供が中学3年生になるまでは転校させ続ける必要があったのです。

「いろいろなところに友達ができていいんじゃないの」
「社交性のある子に育ちそう」……というポジティブな意見もあると思います。

しかし、多感な時期に引っ越しを繰り返すことは、子供に良い影響ばかりだとは私はどうしても思えません。結果的にどうなるかは、大人になってみないと分からないし、転校を繰り返すことが子供の心に影を落とすことだって大いにあると思います。

「子供のために夫をほったらかすなんて」という意見もあるでしょう。実際に、単身赴任がきっかけで夫が浮気するなどの危険は大きいと聞きます。家庭崩壊や離婚の危険も、同居家族の2倍以上だという情報もあります。

ただ、好きでバラバラになりたいわけではないのです。

「転勤族のくせに家を買うなんて馬鹿なの?」という言葉も検索でヒットします。実際にアットホーム株式会社によるトレンド調査においても、一生賃貸派の人のうち、半数以上は転勤族だと回答しています。

しかし、損得だけの問題ではなく、転勤族が家を買うのには、子供への影響、妻が仕事に就けないなど、さまざまな事情があるのです。

転勤族が家を買って損をしないためには

私の友人で、転勤族なのに2回家を買った人がいます。

1度目は駅徒歩圏の戸建注文住宅で、買って3年目にご主人の転勤のため売却し、元が取れる値で売れたそうです。2度目は比較的都市部の駅近マンションで、現在も住まれています。このように柔軟性のある転勤族は珍しいかもしれません。

彼女が言うには「資産価値の下がらない物件を厳選している」のだそうです。

資産価値が下がらない物件とは、どういうものでしょうか。閑静な住宅街に住みたい人もいれば、便利のいい都市部に住みたい人もいると思います。子育て世代にとって理想的な環境は、適度に都会で適度に緑があって治安も良い場所なのではないかと思います。

しかし、最も資産価値が下がりにくいのは「利便性の良い場所」です。これは、内閣府・住生活に関する世論調査でも46.5%の人が立地の利便性を「住生活において最も重視していること」に挙げています。

マンションなら駅徒歩5分以内の物件を探す人が最も多く、戸建なら駅に徒歩で行ける距離(徒歩15分など)でないと資産価値の維持は難しいと考えられます。

それでも新築を買うと、1ヶ月しか住まなくても「中古物件」になるので、ほとんどの場合買った時の価格以上で売ることはできないでしょう。前述の友人の家は立地が良くセンスもあり、さらに人によって好き嫌いの分かれる間取りやデザインでないオーソドックスな家だったので、付近に類似物件がなかったこともあり高値で売れたのだと思います。

普通は、買った時の価格以上で売ることはできません。そのためにも、住宅ローンが完済できる価格で売れるというだけでなく、「住んでいた期間に負担するはずだった賃料を引いたくらいの損」で売却できる物件を選ぶ必要があるのです。

駅徒歩圏・人気エリアなど立地条件の良い家を選ぶ

まず、駅徒歩圏の家は圧倒的な人気があります。駅近マンションは築年数が経っていても需要があり、賃貸にも出しやすいです。子育て世代に人気の地域ならなおさらです。またファミリー層なら、通学路の安全性なども重要です。

戸建の場合も駅徒歩圏が望ましいです。前面道路が広く間口が広いところでないとなかなか売れません。前が狭い私道などの物件は捨て値でも売れない場合があります。なるべく高低差のない土地がいいですが、経験上そういう場所は手が届かない価格です。一戸建ての場合、最終的には土地だけの価格になってしまいますので、建物より立地が重要です。

わが家は駅までバスという嫌われやすい立地であるうえに、前面道路との高低差がある物件を選んで失敗してしまいました。開発中の分譲地なので、あと10年ほど後に売ことになったら1,500万円以上の損失覚悟で売らなくてはならないでしょう。価格差をかなり大きくしないと、みんな新築のほうがいいに決まっているので売れません。

それでも、その程度の損失なら住宅ローンは完済できます。しかし、住宅ローン控除やそれまで支払った固定資産税などを考慮しても、収入とかけ離れたレベルの家賃を支払っていた計算になってしまいます。

転勤族で、夫についていった先で家を買う、というのはかなりのリスクがあります。双方の実家が遠いなら将来売る可能性は高いです。売却したときにきちんと売れる物件を選びましょう。

適正な価格の建物を選ぶ

何度もいいますが、日本の住宅は高いです。立地にもよりますが、建売住宅でも3,000万円程度はかかりますし、マンションなら4,000万円前後、土地付き注文住宅なら4,000万円以上かかることがほとんどです。

大手ハウスメーカーで35坪くらいの家を建てるとなると、建物価格だけで3,000万円以上かかります。土地が1,000万円台だとしても、諸経費込みで総額5,000万円以上かかると想定しておいた方がいいでしょう。

そして価格に見合った価値があるかと言うと、それも疑問です。多くの人は買う時にかかった総額費用で考えますが、実際にはローン金利・維持管理費・固定資産税などの税など、持ち家にはさまざまな費用がかかります。

以下のような条件の場合で簡単に試算してみましょう。

  • 自己資金:800万円
  • 住宅ローン借入期間:30年
  • ローン金利:全期間1.0%
  工務店など大手ハウスメーカー
購入時費用土地1,000万円1,000万円
建物2,000万円3,000万円
諸費用(10%)300万円400万円
初期費用合計(3,300万円)(4,400万円)
住宅ローン借入額自己資金:800万円(2,500万円)(3,600万円)
ローン金利395万円568万円
固定資産税400万円400万円
修繕費200万円300万円
住宅ローン控除▲200万円▲315万円
30年間にかかる費用総額4,095万円5,353万円

※固定資産税や都市計画税などは自治体の評価額によってちがうので、わが家の例などから考えて、本当にざっくりです。住宅ローン控除も年収などによって変わりますので、あくまで参考値としてみてください。

このように3,000万円の物件を買ったつもりでも、30年間で総額4,100万円近くかかる計算になります。

これが大手ハウスメーカーで買うとなると、さらに負担は増えるでしょう。同じくらいの規模の家でも土地と建物価格だけで5,000万円を超えてしまうことも大いに考えられます。そうなると借入額も増え、金利も増えます。大手メーカーの場合、利益率が3割超だと言われているので、高価だからといって品質が良いとも限りません。

わが家は中堅ハウスメーカーで建てましたが、実際に工事をしてくださったのは〇〇建築といった名称の「住宅建築を直接請け負っておられる会社」です。その会社のサイトもきちんとあります。つまり、ハウスメーカーがプランニングし、材料や工法などを提供し、実際の建築はその普通の建築会社がされているわけです。

そこからさらに下請けの土木業者や内装業者、外装業者、配管・電気工事などの業者が入ってくれることになります。それぞれに中間マージンが発生しているので見えない費用がかかっています。決して、工務店の家の品質が悪いというわけではなく、中間マージンがないぶん大手ハウスメーカーのような高額な建築費用がかからないだけなのです。

むしろ、ハウスメーカーで建てるほうが、施主と現場の作業員とのつながりが浅くなりやすく、手抜き工事なども懸念されるとよく言われます。提案力のある工務店などは探せばありますので、もっとしっかり考えるべきだったと後悔しています。タウンライフ家づくりで注文住宅の間取り作成のように、何社かが提案してくれるWebサイトなどを利用するのもいいと思います。

この辺りのことについては、近々専用のページをつくろうと思っているので、また追記します。

賃貸と持ち家にかかる費用の比較

上の家を建てた場合に30年間にかかる費用の表から見て、30年後に土地程度の価格で物件を売却できた場合と、20年後に少し価値の残った家を売却できた場合についても考えてみましょう。

まずは上の表から算出した30年間にかかる費用から、売却した場合の代金を差し引き、それを30年で割って1カ月当たりの家賃負担額として換算してみます。

 工務店など大手ハウスメーカー
30年間にかかる費用総額4,095万円5,353万円
30年後、1,000万円で売れた場合8.6万円12.1万円
30年後、1,500万円で売れた場合7.2万円10.7万円
30年後、2,000万円で売れた場合5.8万円9.3万円

 

工務店など2,000万円程度の家の場合、土地価格のみの価値しかなくなったとしても、家賃程度の負担だったということになります。対して大手ハウスメーカーなど高価な家の場合、家の価値が少し残ったとしても、毎月の家賃としては厳しめの負担となります。

次に、新築から20年間で支払う費用について、同様にざっくりと計算すると以下のようになります。

  工務店など大手ハウスメーカー
購入時費用土地1,000万円1,000万円
建物2,000万円3,000万円
諸費用(10%)300万円400万円
初期費用合計(3,300万円)(4,400万円)
住宅ローン借入額自己資金:800万円(2,500万円)(3,600万円)
ローン金利348万円501万円
固定資産税345万円345万円
修繕費100万円150万円
住宅ローン控除▲200万円▲315万円
30年間にかかる費用総額3,893万円5,081万円

さらに、上で算出した総額費用から、30年後の場合と同様に20年後に売却した場合についても、1ヶ月の家賃負担額として換算してみると以下のようになります。

 工務店など大手ハウスメーカー
20年間にかかる費用総額3,893万円5,081万円
20年後、1,000万円で売れた場合12.1万円(17.0万円)
20年後、1,500万円で売れた場合10.0万円14.9万円
20年後、2,000万円で売れた場合7.9万円12.8万円
20年後、2,500万円で売れた場合5.8万円10.8万円
20年後、3,000万円で売れた場合(3.7万円)8.7万円

このように大手メーカーのような高価な家は付加価値があるうちに売却したとしても、かなり大きな負担がかかることが分かります。ただ、優良ストック住宅推進協議会(スムストック)などでは、築20年以上でも3,000万円で売りに出されている物件もあるため、そのくらいの価値があれば家賃程度の支払いで済むかもしれません。

まとめ

マイホームを持つことで得られるものもありますが、失うものもあります。夫を取るか子供を取るか仕事を取るかという単純な問題ではなく、経済的にも余裕がなくなるのは事実です。終の棲家と考えないなら、長子が小学生のうちに家を建て、末子が高校卒業の頃に状況を見て売却を考えるというのがわが家の出した結論でした。

賃貸か持ち家か、どちらがいいかは人それぞれですが、転勤によって引っ越しを余儀なくされたり、家族がバラバラに住まなければいけなかったりすることは切ないものです。わが家は家を建てましたが、実際に夫を単身赴任させることになって、もやもやとした日々を過ごしています。

ただ、著しく土地の価値が落ちるような立地を選ばなければ、しっかりとして適正価格の工務店を選んで建てたら「売却時には、結局家賃程度の支払いだった」となることもあります。

転勤族が家を持つなら、新築してから15~20年後でも価値の残る家を建てましょう。